歯が接触しているのは1日わずか20分？
人間の上下の歯が接触している時間は、食事や会話の時を除くと1日のうち平均でわずか20分程度と言われています。普段、リラックスしている時は、上下の歯の間には2〜3mm程度の隙間（安静空隙）があるのが正常な状態です。
しかし無意識のうちに上下の歯を接触させてしまう癖があると、この隙間がなくなり、歯や顎の筋肉に長時間にわたり負担がかかり続けます。
これが「TCH（Tooth Contacting Habit：歯列接触癖）」や「食いしばり」「歯ぎしり」と呼ばれる習癖です。
もしかしてTCH？あなたの歯の「負荷のサイン」
TCH（歯列接触癖）や食いしばりなどの力が歯にかかっている場合、歯はその力を逃がそうとして特定のサインを出します。
❚ 習癖のサイン
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食いしばり、歯ぎしり、TCHなどの口腔内の習癖がある
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うつ伏せ、横向き寝、頬杖など外側から口に力が加わる習癖がある
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糸切り歯（犬歯）や前歯の先端が擦り減って平らになっている
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唇を閉じた時に、奥歯だけが当たって前歯が噛んでいない状態になっている
❚ 歯・歯茎のサイン
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歯の根元（歯茎との境）がくぼんでいる
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歯茎が1歯だけ下がっている
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詰め物・被せ物が何度も外れる
❚ 痛み・不快感のサイン
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噛んだら痛い
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冷たいものなどがしみる（知覚過敏）
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筋肉の緊張や疲労（顎や肩こり）がある
なぜ「ひび」や「破折」が起きるのか？
これらの過剰な負荷のサインを無視していると自然に、歯の「ひび（クラック）」や「破折（歯が割れること）」が現れることがあります。
❚ ひび（クラック）は「過重負荷のサイン」
歯に強い力が繰り返し加わると、ひび（クラック）が発生します。
１）目に見えない内部から発生：
クラックは、力の集中によって歯の内部から発生して、次第に外側のエナメル質に現れます。そのため「ヒビがある部分に力がかかっている」とは限らず、診断が難しい場合が多いです。
２）虫歯や破折のリスク：
一度ヒビが入ると、そこに汚れや細菌が入り込みやすくなり普通の場所よりも虫歯になりやすくなります。ヒビが深くなると最終的に歯が真っ二つに割れる「破折」につながります。
❚ 詰め物・被せ物のトラブルも原因に
歯に詰めている金属やプラスチック（レジン）と、ご自身の「歯の組織」とでは、噛む力が違います。噛む力が強いと、この差で詰め物と歯の間にわずかな隙間ができてしまいます。
この隙間に汚れが入り、プラスチックの縁が着色したり詰め物が外れやすくなったりします。これも歯に過剰な力がかかっているサインです。
力の受け止め方と治療の難しさ
過剰な力がかかった時、患者さんの「骨の強さ」や「歯周病の有無」によって歯へのダメージの出方が異なります。
パワータイプ（骨が丈夫な方）
■ 力の受け止め方：
歯を支える骨が頑丈なため、歯が揺れにくいです。結果として、力が分散されずに歯に集中してしまい、ひびや破折につながりやすい傾向があります。
■ リスク：
歯が割れてしまうと抜歯になってしまう可能性が高くなります。
歯周病タイプ（骨が弱っている方）
■ 力の受け止め方：
歯周病で歯を支える骨が溶けているため歯に力がかかると歯が揺れます。この揺れによって歯自体が割れることは少ないですが、揺さぶられて骨がさらに溶けてしまうため、歯の揺れがどんどん大きくなり、最終的に歯が抜けやすくなります。
■ リスク：
破折のリスクは低いものの、歯周病の進行を加速させてしまいます。
「歯を守る」ための具体的対策
TCHや食いしばりなどの無意識の癖は、意識して改善することができます。
「歯を離す」ための認知行動療法
TCHは「無意識の癖」なので、まずは「意識する」ことが改善の第一歩です。
■ ポストイット法：
パソコン、スマホ、冷蔵庫など、よく目にする場所に「歯を離す」「力を抜く」と書いた付箋を貼りましょう。これを見るたびに、上下の歯が当たっていないかチェックし、力を抜く習慣をつけます。
■リラックス法：
歯が接触していることに気づいたら、大きく深呼吸をし、「フーッ」と息を吐きながら肩の力を抜き、顎をリラックスさせましょう。この時、舌の先を上あごのスポット（前歯の裏側の少し盛り上がった部分）に軽くつけておくと上下の歯が離れやすくなります。
就寝中の対策
就寝中の食いしばりや歯ぎしりは、ご自身でコントロールできません。
■マウスピース（ナイトガード）の着用：
歯科医院で作成するカスタムメイドのマウスピースを就寝時に装着することで、歯にかかる過剰な力を分散し、ひびや破折を予防します。
定期的なチェックと早期治療
■ 歯科医院での定期検診：
歯のひびは、ご自身では気づきにくいことが多く、また、詰め物の下の虫歯や歯周病の進行にもつながります。定期的な検診で、歯科医師に過重負荷のサイン（くさび状欠損、咬合面のすり減り、クラックなど）がないかチェックしてもらいましょう。
これらのことを意識することで将来的に歯を長く健康に保つことができます。気になる症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
その他、ご質問・こんなことを聞いみたいがありましたらお気軽にお知らせください。