口腔ディスバイオーシスとは?
お口の細菌と胃腸・全身の健康との意外な関係
「毎日歯磨きをしているのに、むし歯ができる」
「歯ぐきから血が出るけれど、痛みがないのでそのままにしている」
そんな経験はありませんか?
実は、お口の健康には、歯磨きだけでなく、お口の中に存在する細菌のバランスが深く関わっています。
近年、歯科医療で注目されているのが「口腔ディスバイオーシス」という考え方です。
さらに最近の研究では、お口の細菌バランスの乱れが、腸内細菌のバランスにも影響し、全身の健康と関係する可能性が指摘されています。
今回は口腔ディスバイオーシスとは何か、腸や全身の健康とのつながりについて、わかりやすく解説します。
① 口腔ディスバイオーシスとは?
私たちのお口の中には、数百種類もの細菌が存在しています。
これらの細菌が作る集まりを「口腔マイクロバイオーム」と呼びます。
細菌と聞くと、悪いものというイメージがあるかもしれません。
しかし、お口の中の細菌がすべて悪いわけではありません。
健康なお口の中でも、多くの種類の細菌がお互いに影響し合いながら存在しています。
何らかの原因によって細菌の種類や割合、働きが変化し、健康を保つバランスが崩れた状態を「ディスバイオーシス」と呼びます。
つまり、口腔ディスバイオーシスとは、単に悪い細菌が増えることではなく、お口の中の細菌全体のバランスが乱れ、病気につながりやすい環境になることです。
② なぜお口の細菌バランスが崩れるの?
お口の細菌バランスには、さまざまな要因が影響します。
例えば、次のようなものです。
- 歯磨きが不十分でプラーク(歯垢、菌の塊)が蓄積する
- 砂糖を含む飲食物を頻繁に摂取する
- 唾液の分泌量が減少する
- 喫煙習慣がある
- 歯ぐきに慢性的な炎症がある
- 糖尿病など、全身の健康状態が影響する
特に重要なのが、細菌が生活する「お口の環境」です。
例えば、砂糖を含む飲食物を頻繁に摂取すると、細菌によって酸が作られ、お口の中が酸性に傾きやすくなります。
すると、酸に強い細菌が増えやすい環境となり、むし歯のリスクが高まります。
また、歯ぐきの炎症が続くと、歯周ポケット内の環境が変化し、歯周病に関連する細菌が増えやすくなります。
このように、お口の環境が変化することで細菌のバランスが崩れ、その変化がさらに病気を進行させるという悪循環が生じることがあります。
③お口の細菌バランスは全身の健康にも関係する?
歯周病と糖尿病、心血管疾患など、さまざまな全身疾患との関連が研究されています。
その仕組みとして、従来から注目されてきたのが、歯周病による炎症や細菌由来の物質が、血液を介して全身に影響する経路です。
しかし、近年の研究によって、もう一つの重要な可能性が注目されています。
それが、口腔内の細菌が腸内環境に影響を与え、腸を介して全身の健康に関係するという仕組みです。
・血流を介する経路歯周病では、歯ぐきに慢性的な炎症が生じています。
歯周病が進行すると、歯周ポケットの内側の組織が傷つき、細菌や細菌由来の物質が血流に入り込むことがあります。
また、歯周病によって生じた炎症性物質も、血液を介して全身に影響する可能性があります。
このような仕組みが、歯周病と全身疾患を結びつける一つの経路として考えられてきました。
・腸を介する経路私たちは、毎日唾液と一緒に多くの口腔細菌を飲み込んでいます。
通常、飲み込まれた細菌の多くは胃酸などによって減少します。
しかし、近年の研究では、歯周病に関連する口腔細菌が腸内環境に影響を与える可能性が指摘されています。
腸内細菌叢の変化に伴って、腸のバリア機能や免疫反応、細菌由来の代謝産物にも変化が生じることが示されています。
このような変化が、腸だけでなく全身の慢性的な炎症にも関係している可能性があります。

④ 腸内ディスバイオーシスとは?
腸内にも、お口と同じように多くの細菌が存在しています。
これらの細菌の種類や割合、働きのバランスが乱れた状態を「腸内ディスバイオーシス」と呼びます。
腸内細菌は、食べ物の消化や代謝、免疫機能などに関係しています。
また、腸には、必要な栄養を吸収しながら、細菌や有害な物質が体内へ過剰に入り込むことを防ぐ「腸管バリア」という働きがあります。
腸内ディスバイオーシスが生じると、次のような変化が起こる可能性があります。
- 腸内細菌叢の変化
腸内に存在する細菌の種類や割合、働きが変化します。
- 腸管バリア機能の低下
腸の粘膜が本来持っている防御機能が低下し、細菌由来の物質が体内に入りやすくなる可能性があります。
- 免疫バランスの変化
炎症を促進する免疫反応と、それを抑える免疫反応のバランスが変化する可能性があります。
- 細菌が作る代謝産物の変化
腸内細菌が作り出す物質の種類や量が変化し、全身の代謝や炎症反応に関係する可能性があります。
こうした仕組みを通じて、口腔ディスバイオーシスが腸内環境に影響し、さらに全身の健康にも関係するのではないかと考えられています。
⑤口腔ディスバイオーシスと関連が研究されている全身疾患
糖尿病
心血管疾患(アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞・脳卒中など)
炎症性腸疾患
肥満・脂肪性肝疾患
アルツハイマー
関節リウマチ
早産・低体重児出産などの妊娠トラブル
etc…
⑥ お口の細菌バランスを整えるためにできること
- 毎日の歯磨きと歯間清掃
歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラークを十分に取り除けないことがあります。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、プラークが蓄積しにくい状態を保ちましょう。
- ダラダラ食べ・ダラダラ飲みを控える
甘いものを食べる頻度が重要です。
砂糖を含む飲食物を頻繁に摂取すると、お口の中が酸性になる時間が長くなり、むし歯のリスクが高まります。
食事や間食の時間を決めることも予防につながります。
- 唾液の働きを大切にする
唾液には、お口の中を洗い流したり、酸を中和したり、歯の再石灰化を助けたりする働きがあります。
口の乾燥が気になる場合は、歯科医院で相談しましょう。
- 定期的な歯科メンテナンス
毎日丁寧に歯磨きをしていても、磨き残しが生じることがあります。
また、歯石は歯ブラシでは取り除くことができません。
歯科医院で定期的にお口の状態を確認し、クリーニングや歯周病の管理を受けることが大切です。
バランスのとれた食事で腸内ディスバイオーシスを避け、適度な運動などのライフサイクルで自然免疫の低下を防ぐことも大切です。
当院では『噛み合わせを軸に「綺麗」を「長持ち」させる』をコンセプトに、奥歯でしっかり噛めるように咬み合わせを大切にしています。
しっかり噛めることで胃腸への負担を減らし、食べ物の消化や代謝を促進できれば、腸内ディスバイオーシスを避ける一助になりうるのではないかと考えています。
気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
